シルバン・ギュントーリ、 ル・マン 24 時間レースで 自動車・バイク 両方の勝利を目指す
MOTUL のブランドアンバサダーである、シルバン・ギュントリー氏を迎えて、 彼の 2 輪と 4 輪レースに対する考えをインタビュー。
2023年5月31日、Motul ・ ブランドアンバサダーであり、ヨシムラ SERT Motulのライダーでもあるシルバン ・ ギュントーリ が、2 輪と 4 輪のレースに対する考えについて 、 アジアパシフィックのメディア向けにオンラインインタビューを行い、今後の目標やライディングキャリアを振り返りました 。
2014年アプリリアでWSBK(スーパーバイク世界選手権)チャンピオンになったシルバン・ギュントーリ。
スズキ株式会社創立100年の節目である2020年に、スズキのMotoGPファクトリーチームのテストライダーを務めていたシルバンは、同年のMotoGPで歴史的な優勝に大きく貢献した。ライダーのジョアン・ミルは、2000年にケニー・ロバーツJr.が優勝して以来20年ぶりとなるMotoGP王者の座を継承しました。このスズキの快挙の背景には、テストライダーとしてチームを支えたシルバンの多大なる働きがあり、勢いづくチームの歯車と歯車の潤滑油となり勝利に導く大きな役割を果たしました。シルバンは「あの数年間は、私にとって忘れられない思い出です。バイクも素晴らしかったですし、チームも素晴らしかった。すべてがとても特別でした。そしてジョアンと優勝することもできました。とてもいい思い出です」と彼は当時のことを振り返ります。
Motul は、2021年スズキ(ヨシムラ SERT Motul)からEWC(世界耐久選手権)に参戦していたシルバンを、ブランドアンバサダーとしてMotulファミリーの一員に迎え入れました。Motulはスズキと30年以上の付き合いのあるオイルメーカーですが、シルバンは異なるバイクブランドや複数のカテゴリーでの豊富な経験と、2000年の250cc世界選手権のデビューをルーツとする非の打ち所のないキャリアを持ったベテランライダーという点などが評価され契約に繋がりました。シルバンはアジア太平洋地域のさまざまなマスメディアと対話するラウンドテーブル「Motul Station」(2023年)に参加した際に、Motulについてこのように語っています。「Motulは歴史のあるオイルメーカーであり、これまでに様々なストーリーを一緒につくりあげてきました。私たちは2年以上も前から商品作りを加速するために会議を重ねて、新しい製品シリーズを開発しています。私はMotulとの素晴らしい関係の中で、重要な役割を果たすことができていると思っています」。
また彼の貢献は、単なるMotul製品の紹介だけにとどまりません。シルバンはさまざまな分野に精通しており、レーシングドライバーであり、街でバイクを操るユーザーでもあり、メカニックとしても自分のひらめきを商品開発に活かそうとします。「私は毎日バイクに乗り、自分のライディングを進化させています。ライディングやドライビングはライフスタイルのようなものです。だから常に自分のヘルメット、車、バイクなどをきれいにメンテナンスする必要があるのです。家にはトレーニングバイクやYouTubeにアップするためのバイクなど、たくさんのバイクがあります。子供たちもミニバイクを何台か持っています。日常的に、Motul製品を使用してたくさんのマシンのケアをしています。その工程はアイデアを生み出し、とても楽しい時間です。私は日々、バイクやクルマそして自転車などにも使用できるアイテムのアイデアをストックしており、さまざまな角度から新商品に繋がるように考えています」。
情熱のすべて
40歳を過ぎてもなお現役のシルバンは、長い現役生活の原動力は情熱にあると語っている。「そこに情熱とスピードへの思いがある限り私は走り続けるでしょう。考えても分かりませんが、レースには大きな情熱があります。私にとっては2輪だろうと4輪だろうとレースをするときは特別な感情が芽生えます。だから、40代になってもレースは大好きですし、憧れでもあります。12歳のときから競うことが好きになり、いまでもその情熱は変わりません。だから、今でもレースをしたり他の選手と争ってスピードを感じることが好きなのです。」
人生の半分以上をスーツケースとともに世界中を旅してきたシルバンは、今もなお、その中にさまざまな夢を詰めこんでいる。その夢の1つに最も近づいたのは、2022年にモータースポーツ活動の終了を表明したスズキ・ヨシムラSERT Motulで臨んだ2022年EWC(世界耐久選手権)での王座防衛です。2021年にシルバン、グレッグ・ブラック、グザビエ・シメオンと共に権威あるル・マン24時間耐久レースやボルドール24時間耐久レースでも優勝を果たし年間王者となったスズキ・ヨシムラSERT Motulですが、シルバンは2022年にこのように語っています「スズキ・ヨシムラSERT Motul はEWCで再び勝利するポテンシャルはあると思う。ル・マンではクラッシュがあったとはいえ、チームは優秀だったしバイクも素晴らしかった。だから、僕たちはきっと王座防衛ができると信じている…」。シルバンは2022年のル・マン24時間耐久レースで優勝することに集中し、みごと逆転優勝をして2連覇。チーム一丸となって夢の1つを叶えることができました。
ルネッサンス・マン
マルチな才能を持つシルバンの冒険は、これだけでは終わりません。アプリリアのWSBK世界チャンピオン(2014年)、ル・マン24時間耐久レース世界チャンピオン、スズキMotoGPのテストライダー(5年間)、元BSBライダー、MotoGP、250cc... まさに彼はモーターサイクル界のルネッサンス・マンと言えるでしょう。耐久ライダーとしての仕事に加え、MotoGP世界選手権ではイギリスのテレビ局BT(ブリティッシュ・テレコム)の解説者として協力するなど多方面で活躍。
そして、シルバンの最も知られざる一面として、彼がYouTubeを愛し、どのようにして映像制作者としての才能を見出したかのでしょうか?すべてはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の隔離生活から始まった。「私はCOVID-19の拡大前にスズキのGSX-R1000を使って何かYouTubeで動画を撮ろうと企画していました。その後、感染が拡大したことで自由な時間が出来たので、地元のサーキットであるドニントンパークに行き、いくつかの動画撮影から始めることにしました。そしてラッキーなことに僕の動画を多くの人が気に入ってくれたのです!」と振り返ります。 「作品を作るにつれてライディングテクニックやテクニカルな話をするために、もっとYouTubeに挑戦してみようと考えるようになりました。これは僕にとってとても大きな挑戦でしたが、とにかく毎回作品を作るのが楽しかったです。でも、楽しい反面、シナリオを書き、映像を撮影して、それを編集することを学ばなければなりませんでした。これは簡単なことではありませんでしたよ!」
しかし、シルバンの冒険はこれだけでは終わりませんでした。それは2輪から4輪レースの世界への転身でした。彼はMotulと組み新たな冒険に出発したのです。これは間違いなく、革命的な挑戦なのです。2022年、彼はシルバーストーン・サーキットでフォルクスワーゲン・ゴルフTCRを操り、短時間ではありましたが4輪でのキャリアをスタートさせました。「バイクと同様に車のレースも常に楽しむことができました。バイクのレースをしていたときのような感覚を味わえた。」と彼は強調します。自由な時間が持てるようになり初めて彼は4輪レースに大きな情熱を発見したのです。
ル・マン24時間レース後に、大きな夢を抱く
シルバンは偶然にも2021年のル・マン24時間耐久ロードレースを制した後、自動車レースへの情熱が高まりました。「2021年はスズキのおかげでバイクレースでル・マン24時間を制覇することができました。」と彼は振り返ります。その予想外の成功は1年後に再び繰り返され2022年のル・マンでも優勝。レース後に、ル・マンの主催者であるACO(Automobile Club de L‘Ouest)との何気ない会話が、その後シルバンが昼夜眠れないほど激しく心の火花を散らすきっかけとなったのです。ACOとシャンパンを飲みながら議論したり、冗談を言い合ったりしているうちに「ル・マン24時間レースで2輪と4輪の両方で優勝した史上初の人物になりたい!」と強く考えるようになりシルバンは4輪の世界へと進んでいきます。彼は4輪への挑戦について「もしそれができたら、素晴らしい物語になると思うので挑戦したい、大きな夢を見なければ大きなことを成し遂げることはできません。」と笑顔でコメントしています。
彼の情熱はなかなか冷めませんでした。具体的にいつ挑戦するかなどは決めないで、彼は4輪で積極的に戦っていこうという考えにシフトしました。「そのために今やっているのは、より速く、より良くなるためにできるだけ多くのクルマでレースに出ること。」と語ります。しかし、このプロジェクトはとても複雑だとも言います。「スポンサー戦略やビジネスプランなど、成功のために多くのことの洗い出しを行わないとうまくいきません。」
どのカテゴリーにエントリーするのでしょう?
「特定のカテゴリーがあるわけではありません。2024年、あるいは2025年からの新しいレギュレーションで、GT3に参戦することを目指しています。レーシングカーの経験はほとんどないので、とにかくとても良いブロンズドライバーになりたいです。」と明かします。
「もし、たくさん練習して、とても上手になったら、違うカテゴリーに入るチャンスもあるかもしれません。でも、ハイパーカーのカテゴリーでの参戦は、とても難しいと思います。」
シルバンは本物のレーシングカーに慣れるために、Motulとパートナーシップを結んでいる企業、ラディカル・モータースポーツとのプロジェクトに参加しています。「このプロジェクトは、私たちが一緒に取り組んでいるものです。私にとっては、適切なレースシリーズで、適切なレースカーを使って非常に高いレベルでの競技をすることができているので、4輪レースを学ぶのに最適な方法です。そして、ラディカル・モータースポーツとMotulにとっては、OEMのパートナーシップを示す良い方法だと考えています。」
クルマへの厳しい転向
2輪から4輪への転向は極端なものです。「バイクに乗ることは、私にとって自然なことであり、様々なバイクに適応するのことは簡単なことでした。」と彼は認めます。しかし、自動車に乗り換えるには、それ以上のことが要求されます。「すべてを再調整する必要があります。ダウンフォースやタイヤの種類によって、テクニックもクルマに合わせなければならなのです。たとえばラディカル・モータースポーツのマシーンは、ダウンフォースが印象的でした。コーナースピードは信じられないくらい速かったからです。」
また、2輪か4輪かということだけでなく、それぞれのマシンの挙動はまったく異なります。「バイクはパワーウエイトレシオが高いので、4輪に比べるとはるかに速いです。私たちの2輪の耐久マシンの重量はわずか167kg程度で、230馬力以上のパワーを発揮します。4輪だと、コーナーへの進入スピードがかなり遅いので、ブレーキングもかなり遅くできます。バイクは、Gフォースを除けば、4輪よりもずっとフィジカルです。そして、2輪では、あまりフロントタイヤでプッシュすることはできません。一方、4輪は、これまでのトレーニングでさらにアグレッシブに走れるようになります。」
シルバンはこれまでマシンに乗った中で最高の瞬間を味わえたのはバイクに乗っている時だと語ります。
「特に最高の1台はMotoGP仕様のスズキのGSX-RR。このMotoGPマシンは、まさに完璧に近いものでした。速くて、効率的で、完璧で......」
持久力の実験場として最適なアジア
シルバンは、これまでのレースでの転戦生活の中で最も好きな地域のひとつであるアジアについても語っています。「私はアジア地域が大好きで、これまで多くの国々を訪れました。」と語ります。また、これまで出場した地域の中で最もタフな地域のひとつであることから、そこでレースをすることがいかにチャレンジングであるかについても言及しています。「アジアでは、常にチャレンジングなコンディションが存在します。気温はとても暑く、湿度はマシンにもライダーにも非常に大きい影響を及ぼします。だからとてもハードな戦いになります。マレーシア、タイ、インドネシア...そして日本もです! 物理的にレース中でも水分補給が必要なので、とてもチャレンジングです。」と、彼は強調します。そして、バイクも過度の天候に悩まされます。「バイクにとっては、温度を下げることがとても重要です。Motulはこのような悪条件に対応した製品を常に提供しており、鈴鹿8時間耐久レースでも問題が発生することはありません。Motulのエンジニアにとって、このような製品を開発するのは困難なことですが、とてもうまくいっています。特に、この種のレースでは、最初から入っているオイルは最後まで使い続けなければならないからです。」
このような経験をしたフランス人ライダーのシルバンは、サーキットの内外で得たすべての経験をもとに、このスーパーテク製品の重要性について明確にアドバイスしています。多くの人は、オイル交換やチェーンへの注油、ブレーキフルードの定期的なチェックなど、小さなメンテナンスの価値を過小評価しています。「マシンの性能と全体的な調子の維持のため、そして自分の安全のためにも重要なことです。」と、シルバンは自宅でもトレーニング中でも毎日Motul製品を使用していると強調します。「ヘルメットの洗浄とケアにはMOTUL MC Care M1を使用し、バイクの洗浄とクリーニングには他のMC Care製品を使用しています。そして、最高のパフォーマンスを得るために、オイルには300Vファクトリーラインを使用しています。」
彼の耐久レースにおけるキャリアとしての次の目標はなんでしょう?「私の目標は、チームメイトと楽しく走り続けることです。私が耐久レースを愛するのは、チームメイトと分かち合える感動があるからです。スーパーチームワーク、スピード、粘り強さ、そして強さで構成される特別な絆です。それはとても特別な組み合わせなのです。」とシルバンは語ります。そしてもちろん、「家族を楽しむこと、それは最も美しいレースです。(笑)」
シルバン・ギュントーリ (SYLVAIN GUINTOLI)
1982年6月24日フランス・モンテリマール出身
12歳からレースをはじめ、2001年よりMOTO GP250ccクラスに本格参戦。2007年からはMOTO GPクラスにフル参戦。2009年は英国スーパーバイク選手権、2010年にスーパーバイク世界選手権にスズキのワークスチームから参戦し、2014年にはシリーズチャンピオン獲得。2021年世界耐久ロードレース選手権(EWC)にはヨシムラSERT Motulで参戦し、ルマン24時間、ボルドール24時間耐久レースで優勝しチームはシーズンタイトルも獲得。2022年にはルマン24時間耐久レースで優勝。
2023年もYOSHIMURA SERT MOTULのライダーとして世界耐久ロードレース選手権(EWC)に参戦中。
4輪ではMotul UKが支援するCapture Motorsportのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRでレースを開始。